お茶を知る

【まとめ】和紅茶と紅茶の違い

弊社は、完全自然栽培の和紅茶を取り扱い始めました。

そこで、社内で試飲してもらったところ、

  • 「うすい」
  • 「紅茶っぽくない」

という意見が散見されました、が。

いやいや、そもそも前提認識が違うくない!?

と思ったので、この記事を書くこととなりました。

和紅茶や紅茶を扱おうと検討している方の参考になれば幸いです。

一記事でまとめているのでかなり長いですが、ぜひブックマークしてお客様との話のネタにして頂ければ。

そもそも紅茶って何?

和紅茶どうこう話す前に、そもそも紅茶とはなんぞや?というところから説明していきます。

一言でいってしまうと、ツバキ科の常緑樹の葉っぱを加工したものが、紅茶です。

正式名称は「カメリア・シネンシス」という樹。

雑学でいうと、起源はイギリスかと思いきや実は中国です。17世紀頃にヨーロッパに渡ったので割と最近なのです。

紅茶を作る工程

工程をザックリ書くと、

  1. 摘む
  2. しおらせる
  3. もむ
  4. 発酵させる
  5. 乾燥させる

といった工程を経て、紅茶となります。

ここで重要なのが、「発酵」という工程。

実は緑茶・ウーロン茶・紅茶というのは、同じ木からできています。

何が違うのかというと、「発酵」具合。

  • 発酵をさせなければ緑茶に(不発酵)
  • 少しだけ発酵させるとウーロン茶に(半発酵)
  • 完全に発酵させると紅茶に(発酵)

という風に、発酵をどれくらいするかで名称が変わります。

発酵というとイメージしづらいかもしれませんが、リンゴの皮を剥いて置いておくと褐色になっていきますよね。あれは酸化発酵と呼び、紅茶の発酵工程と同じ原理で色が変化しています。ちなみに微生物による発酵ではなく、酸化酵素による発酵です。

お茶の場合、抽出液のことを水色(すいしょく)というのですが、発酵が進むにつれ緑黄色から赤褐色へと変わっていき、香りも華やかなグリーンな香りから、芳醇な香りや味わいへと変化していきます。

※もちろんそれぞれに適した育成環境や製造方法があります。

紅茶の形状・等級

葉っぱの状態のものと、粉末状のものをよく見かけると思います。

あれにも実は名称があり、大きく分けると

  • フルリーフ(ホールリーフ):葉っぱのまま
  • CTC(ブロークン):細かくしたもの

という名前があります。実はサイズによって等級が分かれていて、

  • オレンジ・ペコー(OP):細長く大型のリーフ。
  • ブロークン・オレンジ・ペコー(BOP):OPの葉を細断したもの。比較的短い時間で抽出可能。
  • ブロークン・オレンジ・ペコー・ファニングス(BOPF):BOPより細かい。ティーバッグに使用。
  • ダスト(D):一番細かい。
  • CTC:押しつぶして引き裂いて丸めて粒にしたもの。

といったように、名称が変わってきます(まだまだあります)。

オレンジペコーのこと、若い頃ずっとオレンジが入った紅茶だと思っていました。

余談ですが「ファイン・ティッピー・ゴールデン・フラワリー・オレンジ・ペコー1」とかいう呪文みたいな名前もあったりします。

等級とはいっても味わいが良い悪いという意味ではなく、単純にサイズが違うという意味です。

大きさがバラバラだと抽出するときにブレてしまうので、安定した味を作るために等級を決めているといったイメージです。

めちゃくちゃ細かいことをいうと、茶の木の枝のどの部分の葉っぱを取るかでもリーフの名前が変わってきます。

先端は柔らかく、香りや味わいも繊細です。下にいくほど硬くしっかりとした味わいになります。

他にもグレードは色々あるのですが、細かすぎて混乱するのでこの辺りにしておきます。

紅茶の旬(クオリティ・シーズン)

紅茶は収穫時期によって名称が変わります。メジャーな名称は、

  • ファーストフラッシュ:春摘み
  • セカンドフラッシュ:夏摘み
  • オータムナル:秋摘み

といったものがあります(※国によって時期は異なります)。

ファーストフラッシュはいわゆる初摘みや新茶と呼ばれるもので、香りが強く高級品が多いです。

後になるほど香りは弱めになりますが味わいはしっかりとしてくるので、紅茶感が欲しかったりロイヤルミルクティなどを作るときはセカンドフラッシュやオータムナルが合うでしょう。

紅茶の産地

実は地名がそのまま付いていることが多い紅茶の名前。

インドの

  • アッサム
  • ダージリン
  • ニルギリ

インドネシアの

  • ジャワ

スリランカの

  • セイロン・ウバ
  • セイロン・キャンディ
  • セイロン・ディンブラ
  • セイロン・ヌワラ・エリヤ
  • セイロン・ルフナ

中国の

  • キーマン

アフリカの

  • ケニア

などはすべて地名です。

雑学:世界三大銘茶は「インドのダージリン」「スリランカのウバ」「中国のキーマン」です。

茶樹の品種

大別すると、中国種アッサム種の2品種があります(細分類はもちろんあります)。

中国種

非常に香り高く、繊細で優雅な味わいが特徴です。

渋み成分のカテキン含有量が少なく、酸化酵素の活性がしづらいため、緑茶によく使われています。

歴史でいうと中国では紀元前59年ごろ、日本でも805年頃と、ものすごく歴史がある品種です。

アッサム種

いわゆる紅茶らしい、渋みのあるキリッとした味わいが特徴です。

カテキンが多く含まれるので、酸化酵素の活性が強いため、渋みも強く水色も濃くなります。

歴史でいうと1823年にインドで見つかった野生樹なので、流通しだしたのは比較的最近です。

紅茶の栽培方法

土質でいうと水捌けがよく柔らかい酸性の土を好みます。日本の茶樹も、山よりも水捌けの良い河辺で育てられたりすることのほうが実は多いです。

生産地の標高も非常に大事で、品種にもよりますが一般的に標高が高く昼夜の気温差が激しいほど香りが強く、標高が低いほどしっかりとした味わいになりやすいです。

最近では有機栽培はもちろんビオディナミ(バイオダイナミック)農法など、農業暦という自然栽培どころか月の満ち欠けを見て作業する内容を変える超自然的な農法が盛んです。

そうした肥料も何も使用しないことで、よりクリーンで繊細な香りや味わいが作られています。

害虫を駆除するために農薬を撒くイメージがありますが、何もしない方が益虫との共生によって自然に淘汰され、負担のないより強い茶樹に育てていく自然農法も、日本でも徐々に認知されてきています。

また、茶樹の増やし方は、

  • 茶の種子から育てる種子栽培
  • 良い茶樹から挿し木しクローンをつくるクローン栽培

があります。

茶園にもよりますが、現在はクローン栽培が主流です。

なんやかんや10年近く安定収穫までかかるので、農家さんには脱帽です。

フレーバーティー

やや余談ですが、紅茶に香り付けしたものをフレーバーティーと呼びます。

実はアールグレイってフレーバーティーなんです!

私も昔は香りの強い紅茶だと思っていました。

ちなみにアールグレイはベルガモットという柑橘系の果実の香りをつけたものです。

フレーバーの付け方も色々あって、安価で出回っているものは香料を添加したものが一般的ですが、ドライフルーツを一緒に入れたものもあったり、最高級品になると密室空間にフルーツなどと共に置いておき紅茶に香りを吸わせるというとんでもなく贅沢なやり方で作る方法もあります。

中国ではラプサン・スーチョンという松葉の燻香をつけた変わったものもあります。正露丸みたいな強い香りがします。

ハーブティーは紅茶は入っていなくて、ハーブのみで作成しています。ですのでノンカフェインです。

たまに紅茶が入っているものもありますが、そちらは厳密にはブレンドティーになります。

和紅茶って何?

さて、前置きが長かったですがここからが本題です。

基本的に上記で書いているような内容は、和紅茶でもほぼ同じです。

和紅茶と紅茶の違いは、実は茶樹の品種が違うだけです。

もっと乱暴な言い方をすると、日本で作っていたら和紅茶です。

上述した中国種とアッサム種。日本では緑茶をつくっていたので、中国種がほとんどです。

  • 「やぶきた」
  • 「ゆたかみどり」
  • 「さえみどり」

などほとんどの品種は中国種で、

  • 「べにふうき」
  • 「べにあかり」
  • 「べにほまれ」

はアッサム種と中国種を交配して作られた紅茶向けの品種です。

和紅茶の味わいの違い

みなさんがイメージする紅茶は、

  • 茶葉も黒く
  • 収斂味(渋み)があり
  • 水色も濃く
  • しっかりした味わい

といったイメージがあると思います。

ただそれはアッサム種系の紅茶なので、和紅茶は違います。

和紅茶はほとんどが中国種系で、元より酸化酵素が少ないためそこまで渋くなりません。

水色も茶褐色というよりはやや緑黄色で、パンチのある味わいというよりも繊細でスッキリとしたうまみや香りを楽しみます。

味わいのイメージはマイルドな台湾の凍頂烏龍茶のような半発酵茶に近いです。

ですので、ミルクや砂糖を入れずにそのままストレートでも無理なく楽しめます。

最高級の紅茶も実は和紅茶と似たような印象で、ものすごくクリーンで香りやうまみを楽しめるものです。国にもよりますがお茶は長時間楽しむ文化なので、あまり強い味わいだとしんどくなるので高級品は優しい味わいが多いようです。

ダージリンのファーストフラッシュやヌワラエリヤは、収斂味やボディ感は弱くグリニッシュな特徴を持っていますが、高級品としての地位を得ています。

和紅茶も「グリニッシュさ」や「うまみ・あまみ」に重きを置いて、緑茶に近い紅茶を作ることで差別化を図っているところもあるようです。

和紅茶の歴史

1870年代頃には作られていたようです。

ただ1971年の紅茶輸入自由化にともない、一気に廃れていきました。

2000年頃から紅茶っぽい味わいのもった品種改良した茶樹も登場し、和紅茶ブームとなってきました。

品種茶と呼ばれるブレンドのしないシングルオリジンも販売され始め、徐々に地位を獲得していっています。

日本茶で和紅茶を作る弊害

日本茶をつくるときは、基本的に農薬や除虫剤を大量に使います。

「良い日本茶」の基準が明確に茶業界内で決まっているため、それを作るために使わざるをえないというのが実情です。

日本茶の場合は農薬などを使っていても焙煎工程がはいるためそこまで気にならないのですが、紅茶は発酵・乾燥させるだけなのでダイレクトに味わいに影響します。

ですので、そのまま和紅茶をつくっても雑味が多い商品がほとんどです。それを紅茶のボディ感と表現しているメーカーもあるので、マーケティングって怖いな…と思う次第です。

自然栽培の和紅茶

それをよく思わない一部の茶農家の方達が、本当においしい和紅茶を作るぞ!と完全自然栽培で作り始めています。

有機栽培(オーガニック)は有機肥料を使うのですが、自然栽培は一切なにも使用しません。

完全放置というわけではなく空気や水の流れを良くするために雑草を刈ったりはしますが、肥料や農薬や除虫剤は一切使いません。

益虫と共生したり、土中の微生物をコントロールすることで元気に育てています。

収穫量も一般的な農法と比べあえて減らし、樹に無理のないように育てる農法です。

そうすることで、雑味のないクリーンで甘い和紅茶ができあがります。

健一自然農園の和紅茶

そんな日本でも稀有な農家の一つである、自然農法で和紅茶をつくる農家が奈良にあります。

完全自然農法で作られた和紅茶は、雑味は当然なく渋みもほとんどないクリーンで甘く、一日中無理なく飲んでいられる和紅茶です。

こだわりの部分は下記記事に載っておりますので、ご覧ください。

和紅茶のラインナップ

弊社で業務用に販売しているものはすべて自然栽培で作られた和紅茶で、

  • 初摘み 和紅茶
  • 大和当帰 和紅茶
  • トゥルシー 和紅茶

の3種類があります。

初摘み 和紅茶

いわゆるファーストフラッシュですが、なぜかセカンドフラッシュよりも味わい深く、ファーストフラッシュ特有のグリニッシュで香り高い特徴もある非常に高級感ただよう優しい味わいです。

商品ページはこちら

大和当帰 和紅茶

大和当帰という奈良で古くから生薬として使われてきたハーブをブレンドした和紅茶です。

やや特徴的な香りではありますが、生薬なだけあり造血作用や飲んでいると通常よりもポカポカと温まってきます。

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トゥルシー 和紅茶

アーユルヴェーダでは必須と言われるほど活用される別名ホーリーバジルと呼ばれるトゥルシー。

美容や免疫向上に良いとされ、爽やかでやや甘い香気成分はリラックス効果も高いと言われています。

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和紅茶お試しセット

単品は量が多いので、とりあえずどんな味か試してみたいという方に少量のセットをご用意しました。ぜひお試しください。

商品ページはこちら

 

以上です。

これで和紅茶のイメージはガラッと変わったと思います。

紅茶が苦手という方でも楽しみやすいので、ぜひ和紅茶もお試しください!

この記事を書いた人

松本 雄介
(まつもと ゆうすけ)

(株)大一電化社・営業部 本社店長。バリスタとして20年近く経験をつみながら、現場の知識を活かして新規開業サポートをしています。ドリンク関連全般はもちろん、料理やお菓子などにも精通している。世界大会経験を活かし、バリスタセミナーも開催中。

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