大一電化社として初めてコーヒー豆を直接買い付けすることになったので、社内記録用としてログを残しておきます。
渡航情報
期間
2024年2月19日〜25日
場所
地域
- Addis Ababa(アディスアベバ/エチオピアの首都)
- Hawassa(アワッサ/シダマ州)
訪問場所
- BNT社Hulling Station
- ARDENT COFFEE社Hulling Station
- ARDENT COFFEE社Washing Station(Shanta Golba)
- ARDENT COFFEE社Washing Station(Dembi#1・Dembi#2)
用語補足
- Hulling Station:国内倉庫。グレード分別や袋詰め作業もここで行う。
- Washing Station:Wet Millがある精選設備。
周辺地域の農家から買い取る場所でもある。
Wet Millが無くAnaerobic処理するだけでもなぜかWashing Stationと呼ぶ。 - Drying Unit:Natural製法のみを取り扱う精選設備。
- Wet Mill:Wash処理する精選設備。
- Processing Center:精選処理設備の総称。
渡航者
- 堀内(MCAA)
- 高橋(MCAA)
- 阪本(アクトコーヒープランニング)
- 岩瀬(レックコーヒー)
- 中村(ナカムラコーヒー)
- 田上(蜃気楼珈琲)
- 三浦(蜃気楼珈琲)
- 松本(大一電化社)
参考
- MCAA:三菱商事のコーヒー生豆輸入部門。
- 阪本:JBC・WBCのチャンピオン達を数多くトレーニング。
- 岩瀬:2014・2015年 JBCチャンピオン、2016年 WBC準優勝。
- 中村:元 丸山珈琲ヘッドロースター。井崎英典・鈴木樹のチャンピオンの豆を焙煎。
エチオピアについて
アフリカで唯一植民地になっていない最古の独立国なので、独自の文化が未だ残っていました。
83部族で構成され、公用語はアムハラ語をはじめとする5言語だが部族固有の言語も残っており、地域によってはエチオピア人同士でも言葉が通じないときもあるそう。
まだまだ発展途上国という印象で、道路もガタガタで歩道がもはや歩道ではない場所が多かったです。
国土は日本の3倍ほど、人口は日本とほぼ同等。しかし年齢中央値が19歳と、人のエネルギーをとても感じる国でした(ちなみに日本は49歳)。
巡るにあたり前提知識として、最低限の歴史や政治体制を認識しておかないと現地の話が理解できなかったためその辺りも共有します。
州政府
政治体制は日本とは違い、連邦共和制です。
ザックリ説明すると、いわゆる大統領はいますが日本でいう天皇のような儀礼的な扱いで、実質的な権限はそこまでありません。
国自体アメリカのように州(Regional State)ごとに運営されていて、州政府がかなり強権です。
国が「右」と決めても、州が「左」と言ったらその州では左がまかり通ります。
日本でいうところの県条例がもっと強い権威を発揮しているイメージです。
それにより、州ごとにコーヒーに関連する決めごとが変わってきます。
エチオピアと中国の関係
1970年にエチオピアと中国は国交を結び、中国から巨額の融資を受けています。
それにより街は大きく発展し、インフラはもちろんホテル含め巨大建造物のほぼ全てが中国資本で作られています。
ただその影響は大きく、債務額がGDPの60%近く及んでおり、ちょうど年末頃にデフォルト(債務不履行)しました。
外貨を稼がないといけないため、その余波でコーヒー価格の値上がりも著しいようです。
エチオピアコーヒーの品質低下及び価格上昇について
大きく分けると原因は7つあります。
①中国債務のデフォルト
こちらは上述の通りです。
②日本の為替問題
こちらも説明するまでもないと思いますので省略します。
③攻撃被害により航路大幅変更
ニュースにもなっているのでご存知の方も多いと思いますが、イエメンの親イラン武装組織フーシ派が紅海を航行中の商船を狙って攻撃しています。海賊紛いのこともしているそうです。
紅海を通るのが最短ルートなのですが現状通れず長距離ルートでいかないといけないため、輸送費が大幅に値上げされています。
④温暖化
元々標高1800mで採れていたものが温暖化の影響でクオリティが下がり、品質を上げるために農園を1900m以上の地域に作る必要が出てきました。
当然新規で農園を開拓する費用もかかりますし、標高が上がる分運送費が上昇します。
体験しましたが農園周りはもはや道と呼べない道なので、道作りも含めると考えると納得でした。
最近は雨も降りづらいらしく、温暖化問題と合わせて年間50億本の木を植えるグリーンレガシーという政府の方針に則って木やコーヒーを植え始めているそうです。
⑤土地の枯れ問題
エチオピアで有名な農園地域はイルガチェフェですが、あまりにも作られすぎて土地の栄養素が枯れてきており(土壌回復が間に合わない)、テロワールが感じにくくなってきています。
でも人気なので奪い合いですぐに買われます。その結果品質は下がったまま価格は上がっている状態が恒常しています。
その状態が続くと他国にコーヒーが取られてしまうため、国をあげてクオリティ維持のために他の地域に目をつけ農園を作っていますが、上述と同じ理由で結局費用がかかるので価格は上昇します。
現地の肌感では数年以内にはシダマなどのクオリティは上昇するのではないかとは思います。
⑥バイヤーの大幅増加
近年エチオピア国内で、コーヒー生豆のバイヤー・エクスポーターが急増しました。
エチオピアは自社農園のみで運営していることはなく、Processing Center近くの小農家からチェリーを買い上げるスタイルです(95%以上の農家は1ha以下の農園面積)。
ですのでチェリーの奪い合いとなり、品質のいまいちなものでも高額で買い上げてしまっているので、品質と価格が剥離していっていました。
ただ、国がクオリティが下がってきていることに危機感を覚え、2023年8月より開始した民間銀行への融資規制に伴い、特に中小企業が資金不足で破産。
ある程度資金力や実力がある企業のみが残り、今年のクロップからプレイヤーが減ったためチェリーの獲得競争は正常に戻りつつ、結果的に品質が向上しているそうです。
⑦ECX
国の機関がすべてのコーヒーを一旦買い取って、そこからしかバイヤーが買えない仕組み。
ある程度の品質維持は可能だが、間を通す費用やセリみたいにもなるので価格はどうしてもあがってしまう。
また、品質チェックはするがあくまで国基準なので、近年ではデメリットのほうが多く感じる。
ただ2020年頃にダイレクトトレードが解禁されたので、一気に自由貿易が広がった。
そのせいで上記のバイヤー増加にも繋がったので、メリットデメリットはあるようです。
国をあげて色々模索している段階で、将来性はすごく感じます。
BNT社
アメリカのROYALやスターバックスリザーブなどにも卸している大手企業。
かなりの大きさ&システマチックなHulling Stationを持っていて、エチオピア内での影響力を感じました。
ただ日本の農協のように全部混ぜてグレードごとに分けて出すだけなので、カッピングした感じはハイエンドというよりはハイコマに近い印象。
会社概要
- 企業名:BNT Industry&Trading PLC
- 年間取扱量:約7,000MT
- 取扱エリア:全エリア
- 所有設備:自社Processing Center 16か所・自社農園 3か所
- HP:https://bntcoffee.com
ギャラリー
ARDENT社
社長のAshenafiはナインティプラスで元々働いていて、エチオピアの担当をしていました(岩瀬さんが大会で使用したネキセは彼が育てたもの)。
2017年に独立してからは、儲けるというよりもエチオピアの国自体を盛り上げていきたいという想いで経営されており、働いている人の環境を整えるために孤児院や学校を自費で作っていました(立ち寄るといろんな人から群がられるぐらい地域から愛されている方です)。
コーヒーに興味を持って欲しいのもあるが、教育をしてエチオピアを引っ張っていく次世代を育てたいという想いがあるとのことです。
大人に対しても、収穫後のアフリカンベッド跡地に牛を放牧してピッカー達のコーヒー時期以外の収入源を作れるように指導したりと、国全体の底力を上げたいという想いを強く感じました。
Green Legacyという政府の方針に則って、年間50億本の木を受けたりコーヒーを植えるサポートもしている(温暖化や雨が降らないのを防ぐため。政府が土地を買って小麦粉などを育てるのもその一つ)。
会社情報がやや長くなりますが、メモとして残しておきます(読み飛ばしてもらってもいいです)。
会社概要
- 企業名:Ardent Coffee Export
- 年間取扱量:年間50コンテナほど(約900MT)
- 取扱エリア:Sidama・Yirgacheffe・Guji・Westery
- 所有設備:自社Processing Center 16か所・自社農園 3か所
- HP:https://www.ardent-coffee.com
所有設備
ウォッシュドはドライパーチメントまでWashing Stationで行い、AddisAbabaに届けてDrymillで生豆の状態にする。
ナチュラルは現地のHulling Stationで脱穀まで行う。
収穫
- 農園:Sidamaエリアに計4か所(Dembi#1・Dembi#2・Shanta Golba・Shanta Genet)
精選
- Washing Station:Sidama 4か所・Yirgacheffe 2か所・Guji 1か所
- Drying Unit:Sidama 7か所・Yirgacheffe 3か所・Guji 2か所
※Sidamaのコーヒーは全て自社Processing Centerを通じて調達しているが、その他エリアでは16-20社の他社Washing Station/Drying Unitからコーヒーを調達している。
脱穀
- Hulling Station:Sidama・Yirgacheffe・Gujiにそれぞれ1か所(計3か所)保有し、精選が完了したNatural製法のコーヒーの保管および脱殻を行う。
…Sidama倉庫保管キャパ:最大50MT*2か所(計100MT)
…精選完了から1カ月以上のレスト期間を経てから脱殻を開始
…1日あたりの脱殻処理能力:50-80袋*85kg/日
…Hulling Stationの稼働時期:2-6月
…Washedは精選完了後、各Washing StationからAddis AbabaのDry millに直送
最終選別
- Dry mill:自社としては所有しておらず、第三者の選別工場で委託選別を行う。但し、現在Sidama県Hawassaに自社工場を建設中。Geisha、Limuエリアのコーヒーを除き、取り扱うコーヒーは全てここで最終選別を実施する予定。
取扱商品
- Natural:全エリアで取り扱っている。
- Washed:Washing Stationのみでの取り扱い。近年需要が減少傾向でNaturalの比率が高まっている。
- Anaerobic:Chireを除く全Processing Centerにて取り扱いあり。
…発酵時間は、Sidamaエリアでは3日間、Yirgacheffeエリアでは2日間(チェリーに含まれる糖分量に応じて発酵時間を調整。糖分含有量が多いほど発酵が早く進む為、発酵時間を短くする必要あり)。発酵中の内部温度は35-36度くらい。 - Carbonic maceration:Shanta Golba・Dembi#2(Sidamaエリア)+Yirgacheffeエリア(1か所)の計3か所のみでの取り扱い。
…発酵時間は4-5日程度。
…シリンダーを通じて冷たい二酸化炭素を注入することで内部温度を5度程度に維持し、Anaerobicよりも長期間の発酵が可能に。発酵を通じて炭酸ガスが発生し内部気温が上昇してしまうので、二酸化炭素は毎日注入する。
※Washing Stationに持ち込まれたチェリーの中でも品質の良いものはNaturalに、いまいちのものはWashedにまわしたりしている(クオリティが低い場合は苗木を無料であげたり農園を指導してクオリティ向上を促している)。
訪れたWashing Station
Shanta Golba
完成されたWashing Stationという印象。
品質も良く、安定したコーヒーを作っています。
Dembi#1・Dembi#2
Dembi#2は今年のクロップから稼働開始。
都市から離れたエリアで周辺農家は基本的に馬・ロバを使用してコーヒーを持ち込む。
Dembi#1まで持ってくるのに大変だから山の上にDembi#2を作った(農家が持ってくるのにもレンタル馬などを使うため費用がかかっていた)。
競合他社のWashing Stationが近隣になく、農家にとって当施設の重要性が高い為、全般的にチェリーの品質は高い傾向にある。
加えて、このエリアは標が高く(2000-2300m)チェリーの品質自体が高い+肥沃なテロワール+いまだ土地が過度に利用されていないことから、ポテンシャルが高く、今後のArdent社の注力場所。
その他ARDENT社関連情報
強み
①トップによる現場との強固な信頼関係:企業トップであるAshenafi自らが各拠点を巡り、拠点管理者との信頼関係を構築。
逆にAshenafiが十分に信頼している人物のみにしか拠点の管理を任せないという体制を徹底。
各Processing Centerにマネージャーを配属し、持ち込まれたチェリーのクオリティによって良いものはナチュラルに、微妙なものはウォッシュドにまわしたりしクオリティコントロールするのがマネージャーの主な仕事。
②不正が起こりづらいシステム構築:一例として、各Processing Centerで買付したチェリーは毎日一日の取引が終了した時点で買い取り記録をまとめ、同社社内システムに集約して直ちにAddis Ababaの本社に報告。
こうすることで、帳簿の粉飾を防ぐ(Ardentとして無駄なコストを支払わなくて良いようなシステムを整備)。
※他社では25%ほど中抜きされたりしていたそうです…。
灌漑(かんがい)設備について(Shanta Golba)
水洗式の精選用の水は、Washing Stationのすぐ横にある小川からくみ上げて上方の貯水池に貯めて使用します。
処理後の水は、農園内にある「ため池(lagoon)」に流し、蒸発させ環境汚染を防いでいます。
※環境規制により汚れた水を川に流してはいけない(各国そういう法律があるらしいです)。
他国では、使用した水をろ過し、水を再利用を行える設備が整っている農家もいるが、エチオピアでは上記の方法が一般的。
農園管理(苗木育成、植え替えなど)
Washing StationにあるNurseryで約1年ほど成長させた苗木を、6-7月頃の雨季に自社農園に植え付け。
苗木に余裕があれば周辺農家に無償で提供している。
パルピングの果肉を堆肥にして15年以上の木に与えることで、少し品質があがるように農園に無償で提供もしている。
Agronomistという大学院卒の農業学者を各農場に雇い、科学的知見に基づいて農地を作っている。
SHANTA GOLBA周辺農家への植え替え指導
15年以上経過したコーヒーの木は、収量が少なくなり、良質な果実を実らせなくなるため、10-15年周期で植え替えを推奨。
但し、一気に植え替えをしてしまうと極端に収穫量が減り、収入へのインパクトが大きい為、農園面積の10-20%ずつを毎年植え替えていくようにアドバイスしている。
他方で、樹齢が高いコーヒーの木の栽培に伴う品質劣化を懸念する地方政府が、ランダムにコーヒー農家を訪問し古いコーヒーの木の植え替えを一気に進めるような場面も発生。
最終的にどちらの意見を採用するかは、各農家の判断となるが、計画性を持ったArdent社のアドバイスを農家が自身で選択できるような日々の関係性構築が大切になる。
Ardent Children Center(ACC)
Ardent社が運営する孤児院施設。Yirgacheffe・Sidamaの計2か所に設置され、各35人ずつを収容。
Sidamaの孤児院に対しては三菱エチオピアも資金援助を行い、先日の開校式をもって、今後子供たちが入居開始予定(我々が行った日に合わせて開校式が行われました)。既にYirgacheffeでは視察稼働済み。
孤児の選別方法:地方政府が孤児を把握⇒その中からAshenafi自体がスクリーニングをかける(①5-10歳②近くに親戚が住んでいないか③勉強意欲があるか)。
Ashinafi氏経歴
- 2000年:Addis Ababa University 卒業
- 2001年:Furra Institute of Development Studiesにて、エチオピアの発展途上問題の解決に取り組む
- 2002年:Sidama農協に入り、主に輸出関連業務を担当
- 2006年:アメリカへ移住、コーヒー会社のコンサルティングを開始。その間、情報科学管理の修士号も取得
- 2012年:Ninety Plus Coffee LLC.入社。エチオピアコーヒーを世界に広めるため、農園にて特殊発酵プロセスにも携わる
- 2017年:Ardent社を立ち上げ、コーヒーの生産・プロセス・輸出事業を開始。徐々に規模を拡大
偉業
元々エチオピア(Domestic Government?)では、クオリティ維持の関係でナチュラルかウォッシュドしか作ってはいけないという法律があり、それ以外を作ると政府から指導が入ったり罰金を支払う必要がありました。
しかしAshinafiはナインティプラス時代に培ったアナエロビックの可能性を、数年罰金を払いながら政府に価値を伝え続け輸出できるようになったそうです。
つまりAshinafiがエチオピアのアナエロビックの元祖です。
他にも国に貢献していることから多数の表彰をされているそうです。
Ardentを使っている他社企業
日本では現状レックコーヒー、サザコーヒー、ウニール、丸山珈琲のみ。
海外の有名どころでは韓国のモモスなど。
エチオピアコーヒー全般情報
品種
エチオピア政府が正式に発表しているのは42品種。
Sidamaエリアに植物の遺伝子バンクがあり、そこでは4435種類の遺伝子を保管しているが、実際には10,000種ほどの品種が存在するとも言われている。
現在、国内の約80%が在来種、残り約20%単一品種を取り扱う。
Ardent社のSidamaエリアでは「58」という単一種の栽培を進めている(土地に合っており、収量が多く見込めることやカップクオリティ―も良いため)。
Ashinafi氏は政府の研究機関から依頼があり、自社農園で実験したり品種や育て方のアドバイザーとして政府と深く関わっているそうです(地域が変われば適当な品種も変わるのでそれを目利きするのが難しいそうです)。
インタークロップ(混作)
エチオピアではインタークロップとして、コーヒー農園にバナナやフォースバナナの木を植えることが多い。
【主な理由】
上記植物の木の根には保水力があるため、乾季でも土壌に水分を保持することが出来、周辺のコーヒーの木の水分の調達・地中からの養分の吸収を助ける役割がある。
農薬の散布が必要ないため、農薬がコーヒーの木に飛散し汚染される心配がない。
※そもそも農薬は高いのでコーヒーは全部無農薬。
クロップ状況
【生産量】
今年が裏作の為、昨年比で生産量減少(Ardent社からのコメント、Sidama県では生産量減少も、全国的にみれば昨年とほぼ同水準の約8.3百万袋程度)。
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現地でのカッピング
超長距離移動と食事への気遣い(衛生的に水がダメなので野菜も食べれないです)などにより体調が万全ではない中での取り組みがまず難易度が高かったのですが、個人的に標高(街中でも2000m)が高すぎて沸点が低いため、いつもと違う条件で味を取らないといけないのが難しかったです(しかもなぜか水が甘かったのでタクタイルが…)。
あと似たような味わいが50カップとか並ぶので、その中でこちらが求める味わいの豆をチョイスするのがだいぶしんどかったですが、良い豆をチョイスできたと思っています。
今後の参考として、阪本さんに教えてもらったカップ評価方法を共有します。
まずカップ数が多すぎるので、時間的にも味覚的にも全部を点数つけるのは難しいという前提で評価します(岩瀬さんは全カップ点数つけてましたが…普段から相当練習してないと無理です)。
- Dry:豆を挽いた際の香り
- Crust:お湯を張った際の香り
- Break:4分経ってスプーンで表面を崩した際の香り
- Taste1:熱い状態の液体
- Taste2:冷めた状態の液体
この5項目で評価します。イメージ的にはカッピングフォームの点数つけない版です。
①〜③は評価の高いもののみチェックマークをつけ、アロマのみコメントを残します。
次に、④の熱い状態で飲んだ際に感じたフレーバーやマウスフィールのコメントを残します。
次に、⑤の冷めた状態で感じたフレーバーやマウスフィールのコメントを残します。
そのコメントを後でまとめて見返し、コメントが多かったり自社の求めているものに合致したもののみを買い付けします(自分の気に入ったもののコメントや理由を定期的に一人一人言わされるので、しっかりコメント残してないと結構困ります)。
今回は諸事情で特別に現地で何kg買いますという話はしませんでしたが、通常はその場で買い付けしないと毎日各国からバイヤーがやってくるためその生豆在庫がなくなっている可能性大とのことです。
スラーピング
そもそものカッピング方法ですが、スラーピング(よくピュイって鳴らしてるやり方)を安定的にできるようになった方が絶対に良いです。
私もたまたま事前に知人に習っていたので出来てたのですが、出来たほうが単純にフレーバーがちゃんと取れるのと、現地の方から本当にこいつ評価できるのか?と疑いの目で見られなくて済みますので。
スラーピングのやり方は論理的に説明可能なので、聞きたい方は松本までどうぞ(流石に文面で説明できないので…私はやり方聞いて20分ほど練習したら出来るようになりました)。
そして飲まずに吐くやり方で評価できるように慣れないと違う意味で吐くので、日本にいる間に普段からその方法でカップ取ってください。
また、カッピングの基礎的なおさらいですが、
- スラーピングでFlavorを、
- 吸わずに口に含ませることでMouthFeelをメインで取り、
- Acidity・Sweetness・CleanCup・AfterTasteはどちらでも取ります。
私は基本スラーピングで全項目取り、冷めたときに再確認のために口に含ませるやり方で取るようにしています。
購入した生豆
- Sidama Shanta Golba Washed G1 × 600kg
- Sidama Dembi #1 Natural G1 × 330kg
- Sidama Shanta Golba Anaerobic Fermentation G1 × 60kg
上記内容を購入しています。
すべて私が行ったWashing Stationで、単純に味で選んだらたまたまそうでした。
すべて真空パックで依頼かけているので、本当に枯れにくいのか1年かけてチェックしていこうと思っています。
使い方としては、WashedとNaturalは浅煎りと中煎りに。
残りはストロングホールドのイベントなどのプロモーションで使用します(全体的に使用予測よりもやや多めに取っています)。
原価はかなり上がるのですが、当然マイナスではないですし全体としてはそこそこ利益とれているので一旦そのままの価格でいくつもりと専務と相談済みです。
ArdentとMCAAは確実に今後伸びてくる会社なので、今のうちにある程度の量を買って懇意にしておいた方が良いという判断です。
蛇足
ここからは完全に蛇足なのですが、あまりにも異文化すぎたのでエチオピアはそんな感じだったんだなと思ってもらう用に私が体験したことを書きます。
食文化
「インジェラ」という雑巾みたいな見た目で、腐った雑巾みたいな味のものが主食です。
そのまま食べるというよりはパンやお米のような扱いで、スパイスや肉などと一緒に包んで食べるスタイル。
テフという雑草を粉にして発酵させたものなので、まぁまぁ酸っぱいです。
食べ続けていると意外と好きになってきて、最終的に一年に一回ぐらいは食べてやっても良いかなと思うようになりました。
標高の影響
標高が高すぎて(街中でも2000mとか。富士山の真ん中ぐらい)酸素が薄いから体が危険を察知して長時間寝れないらしく、毎日4時ぐらいに目覚めていました。
日中は息切れが早いぐらいにしか感じませんでしたが、意外と体は敏感みたいです。
上記にも書きましたが沸点の違いでカッピングがいつもとちょっと違っていて味が取りにくかったです。
体調
食べ物の制限がすごいのと、睡眠不足で体調がめちゃくちゃ悪かったです(口の半分ぐらい口内炎できました)。
そしてだいぶ食には気をつけてたのですが、最終日に食あたりになり薬漬けでした。
次回行かれる方は大量の薬を持っていくことを推奨します(毎食予防で飲んで良いレベル)。
治安
基本車移動をしてくれたので安全でしたが、車から見る景色はなかなかに物騒そうな場所が多かったです(車内でも窓開けて写真撮ったら奪われるから窓閉じてって注意されます)。
Sidamaは比較的平和的な部族が多いようでそれでも安全な方らしいですが…。
危険な部族がいる地域はもはや外国人は立ち入り禁止だそうです。
それが原因で一部農園のコーヒーが手に入らなくなったそうです。
同じホテルに連続で泊まったらそこにアジア人が泊まってるとバレるので、危ないから毎日違うホテルに泊まるというレベルです。
ホテルの入口に銃を持った屈強な警備員が常駐していて、車の中や車の下まで調べられました。
道売りの子供たち
至るところで、3歳ぐらいから高校生ぐらいまでの子供たちが道端でパイナップルやサトウキビなどのフルーツを販売しています。
走ってる車にも駆け寄ってきますし、停車したら群がられて動けなくなります。
街中はともかくなぜか山奥でもどこにでもいました。
一部運転手が普通に買っていたので聞いてみたら、コンビニやスーパー代わりに使っているそうです。
エチオピア人は基本的に愛想の良い優しい人が多かったのですが、幼少期からゴリゴリの客商売をしているからかなと思いました。
以上です。参考になれば。
その他の写真を見られたい方はこちらのフォルダにまとめてますので、ご興味がある方は下記リンクからご覧ください。